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東京地方裁判所 昭和36年(ワ)6704号 判決

ドイツ国プフオルツハイム市

原告

ロヂ・ウント・ヴイーネンベルゲル・アクチエンゲゼルシヤフト

右訴訟代理人

馬塲東作

右訴訟復代理人

伊藤友夫

右訴訟代理人

福井忠孝

湯浅恭三

坂本吉勝

相原伸光

菊池武

右輔佐人弁理士

田代久平

被告

日本金属装具株式会社

右訴訟代理人

旦良弘

右訴訟復代理人

猿谷明

右輔佐人弁理士

森武章

主文

一  被告は、業として別紙第一目録記載の腕時計バンドを譲渡し、貸し渡し、又は譲渡若しくは貸渡しのために展示してはならない。

二  被告は、その肩書本店所在地において所有する前項掲記の腕時計バンドを廃棄せよ。

三  原告のその余の請求は棄却する。

四  訴訟費用は、これを十分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

五  この判決は、第一項及び第二項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

原告訴訟代理人は、主文第一、第二項同旨及び「三 被告は、その譲渡又は貸渡しをする時計バンドに「FIX-FLEX」なる標章を、商標として、使用してはならない。四 訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決並びに右第一項から第三項につき仮執行の宣言を求め、被告訴訟代理人は、「原告の請求は、棄却する。訴訟費用は、原告の負担とする。」との判決を求めた。

第二  当事者の主張

(請求の原因等)

原告訴訟代理人は、請求の原因等として、次のとおり述べた。

一  原告は、次の特許権並びに「Fixoflex」なる商標についての商標権の権利者である。

(一) 特許権

特許番号  第二〇九、七八八号

発明の名称 伸延可能なるリンクバンド

出  願  昭和二十六年四月十日

出願公告  昭和二十九年六月三日

登  録  同年十一月三十日

(二) 商標権

登録番号  第四六八、〇六一号

出  願  昭和二十九年十月十九日

出願公告  昭和三十年三月二十八日

登  録  同年七月十二日

指定商品  旧第二十一類 時計の鎖龍頭、その他の附属品及び金属製腕時計用腕輪その他本類に属する商品

二  体件特許権の特許出願の願書に添附した明細書の特許請求の範囲の記載は、別紙第二目録の「特許請求の範囲」の項記載のとおりである。

三  本件特許発明の要部及び作用効果は、次のとおりである。

(一) 体件特許発明の要部

本件特許発明の要部は、次のとおりである。

(1) 中空リンク及びこれを互に関節的に、かつ、伸延可能に結合し、発条作用に抗して旋回しうべき結合リンクより成る伸延可能リンクバンドであること。

(2)(イ) 中空リンクが、任意の断面形の円筒状鞘のバンドの縦方向において、互に転位された二組により形成されていること。

(ロ) 結合リクンが、バンド縦縁中に設けられたU字形結合彎曲片により形成されていること。

(ハ) 結合彎曲片は、各二個ずつ、その一方の脚をもつて一方の組の鞘の開放端中に挿入され、その他方の脚をもつて他方の組の転位して位置する隣接した鞘中に挿入されていること。

(ニ) 各鞘中には、結合彎曲片を鞘中に確保し、かつ、バンドの伸延あるいは彎曲に際し発条的に反対作用する彎曲板発条が設けられていること。

なお、ここに「鞘中に確保し」とは、彎曲板発条自体の形状より生ずる初張力及び結合彎曲片を鞘中に挿入した場合に生ずる張力の総合張力により、彎曲板発条が結合彎曲片を鞘中に弾力的に固定することを意味し、被告の主張するように彎曲板発条の彎曲端と結合彎曲片の脚の内側上に設けられた横溝との係合により、結合彎曲片が鞘から脱落するのを防止することを意味するものではない。このことは、本件特許発明が「結合彎曲片の脚のカム運動により、リンクバンドにきわめて大きい伸張性及び可撓性を持たせるべく、彎曲板発条の張力を利用し、鞘、結合彎曲片及び板発条の三部材を関節的に連結する」ことを基本的発明思想の一つとしていることに徴し、明らかである。

(二) 本件特許発明の作用効果

本件特許発明の作用効果は、次のとおりである。

(1) きわめて大なる伸延性及び可撓性を有すること。

(2) 伸延に際しては、間隙及び収縮を生ずることなく、したがつて、常に同一の密集せる外観を維持すること。

(3) 鞘、結合彎曲片及び板発条のみから組成され、これによつて各部分は鑞着あるいは鋲着を行なうことなくして組み立てられるから、その設計及び組立ては著しく簡単となり、したがつて、各部分は、また、容易に交換されることができ、かつ、その製作が著しく経済的であること。

(4) 使用板発条が生起する弾性負荷に対して著しい抵抗性を有するから、弛緩あるいは破損のおそれがないこと。

(5) 鞘の断面形は、任意であり、これにより、バンドは種々の嗜好方面に適合させることができること。

四  被告の販売に係る製品の構造は、別紙第一目録記載のとおりである。

五  被告の製品の特徴

(一) 構造上の特徴

被告の製品の構造上の特徴は、次のとおりである。

(イ)号及び(ロ)号図面の物件に共通な特徴

(1) 両側辺4間に間隙部6を残存させて内折し、係止部5とした断面□状の長方形連鎖片、左右の両側片1を垂直状に起立させ、その先端を内方折返部2とした断面□の連結片及び共通弾片12をもつて構成された腕時計バンドであること。

(2)(イ) 連鎖片を、その間隙部が向かい合わせになるようにし、かつ、バンドの縦方向に半ばずらせて上下に対向並列させていること。

(ロ) 連鎖片の内部には、連結片が、各連鎖片について二個ずつ、一方はその内方折返部が、他方は中央部が内部にあるように、また、一個の連鎖片中に挿入された各連結片の他の中央部と内方折返部とは、相対向し半ば位置のずれている隣接した二個の連鎖片の内部にあるように挿入されていること。

(ハ) 各連鎖片中には、共通弾片が、各連鎖片について一個ずつ、その両端が連結片の内方折返部の基部及び中央部の両脇に当たり、その背部が連鎖片の係止部に当たるように圧入されており、この共通弾片は、バンドの伸延あるいは収縮に際し発条的に反対作用するものであること。

(ロ)号図面の物件のみに特有な特徴

(ニ) 上部連鎖片の両側辺の中央に切欠部を設け、これに覆鞘の中央突片を折り曲げて冠着させていること。

(二) 作用効果上の特徴

本件特許発明の作用効果と同一である。

六  本件特許発明と被告の製品との比較

(一) 両者の共通点

被告の製品の連鎖片、連結片及び共通弾片は、体件特許発明における鞘、結合彎曲片及び彎曲板発条にそれぞれあたるところ、両者は、

(1) 中空リンク及びこれを互に関節的に、かつ、伸延可能に結合し、発条作用に抗して旋回しうべき結合リンクより成る伸延可能なリンクバンドであること、

(2)(イ) 中空リンクが、任意の断面形の円筒状鞘のバンドの縦方向において互に転位された二組により形成されていること(本件特許発明における鞘は、任意の断面形の円筒状鞘であるが、被告の製品の連鎖片は、これに含まれる。)

(ロ) 結合リンクがバンドの縦縁中に設けられた結合彎曲片により形成されていること、

(ハ) 右結合彎曲片は、各二個ずつ、その一方の脚をもつて一方の組の鞘の開放端中に挿入され、その他方の脚をもつて他方の組の転位して位置する隣接の鞘中に挿入されていること、すなわち、被告の製品の連結片の内方折返部は、本件特許発明の「U字形結合彎曲片の一方の脚に相当し、被告の製品の連結片の中央部は、本件特許発明の「U字形結合彎曲片」の他方の脚に相当し、これらが前記のように本件特許発明の鞘にあたる連鎖片中に挿入されていること、

(ニ) 各鞘中には、バンドの伸延あるいは彎曲に際し発条的に反対作用をする彎曲板発条が設けられていること

の諸点において、同一の構造を有している。

しかして、両者の作用効果が全く同一であることは前記のとおりである。

(二) 両者の相違点

(1) 本件特許発明においては、結合リンクがU字形結合彎曲片により構成されているのに対し、被告の製品においては、これが□状連結片によつて構成されている点において、両者相違するところがあるが、後者の内方折返部は前者の一方の脚に、また、後者の中央部は前者の他の一方の脚にそれぞれ相当し、後者は前者の一実施態様にすぎない。

(2) 被告の製品のうち(ロ)号図面のものは、本件特許発明にない覆鞘を有しているが、これは付加構造にすぎず、権利牴触の問題には関係がないものである。

(三) これを要するに、被告の製品は、本件特許発明の技術的範囲に属する。すなわち、

(1) 被告の製品の共通弾片は、連結片の脚部にあたる部分を弾力をもつて連鎖片中に固定し、すなわち、確保しているものであり、結局、被告の製品は本件特許発明のすべての要件を具備しているから、その技術的範囲に属する。

(2) 仮に、「確保」の意味が被告主張のとおりであるとしても、確保手段に関する被告の製品の構造は、前記本件特許発明の基本的発明思想(発明の本質)に照らしてみると、本件特許発明の構造に比し単に設計上の微差を有するにすぎないから、本件特許発明の技術的範囲に属する。

なお、被告の答弁第五項の(三)の(2)の事実のうち、被告の製品に被告主張の欠点があるかどうかは、権利牴触の問題と何らの関係がない。また、同項(三)の(2)の(イ)及び(ロ)の事実は認めるが、これらの事実は、被告の物件が本件特許発明の権利範囲に属しないことを確定するものではなく、ことに、登録異議の申立が却下されるについては、本件特許権と被告主張の実用新案権との間の権利使用関係について判断されていないから、この点は本件に何ら影響を及ぼすものではないし、権利範囲の確認審決についてはなお未確定で、現に取消訴訟として東京高等裁判所に係属中である。

七  差止請求

被告は、昭和三十二年ごろから、前記のとおり、別紙第一目録記載の製品を業として販売し、貸し渡し、又は販売若しくは貸渡しのために展示して本件特許権を侵害するとともに、侵害行為を組成する物件である前記製品を肩書本店所在地において所有し、また右販売にあたつて原告の有する前記登録商標に外観、観念及び称呼の点からみて類似する「FIX-FLEX」なる標章を前記製品に刻印し、又は右標章を附した貼紙を右製品につけて使用し、前記商標権を侵害している。

よつて、原告は、被告に対し、本件特許権に基づき、別紙第一目録記載の製品の譲渡、貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しのための展示の差止め及び被告の所有する前記製品の廃棄並びに本件商標権に基づき、被告の譲渡又は貸渡しをする時計バンドに、前記標章を商標として使用することの差止めをそれぞれ求める。

(答弁)

被告訴訟代理人は、答弁として、次のとおり述べた。

一  原告主張の第一項及び第二項の事実は、いずれも認める。

二  同第三項の事実について。

(一) 同項(一)の(1)並びに(2)の(イ)から(ハ)及び(ニ)の本文の事実は、認めるが、(ニ)のなお書きの点は争う。

「鞘中に確保し」の意味は、原告主張のように、板発条の張力のみによつて、結合彎曲片を鞘中に保持することではなく、結合彎曲片と板発条とを掛合することにより、前者が鞘中から脱出しないように固定的に取り付けることであり、したがつて、板発条がこの機能を果たすだけの構造を備えていることが、本件特許発明の構成上必須の要件である。原告主張のように、板発条の張力のみで結合彎曲片を保持しているならば、バンドの伸縮による板発条の起伏により、結合彎曲片は、やがて側方へ押し出されて離脱し、バンドが分解するに至ることは明らかであるから、このような解釈は不合理である。

(二) 同項(二)の事実のうち、本件特許発明に原告主張の作用効果があることは認めるが、これらの作用効果が本件特許発明の特徴であることは争う。

三  同第四項の事実は認める。

四  同第五項の事実は、認める。ただし、被告の製品は、後記(第五項の(三)の(2))のとおり、設計、組立てが著しく簡易で、部分品の交換が容易であり、また、その製作が著しく経済的であり、本件特許発明に比し、より優秀である反面、バンドの伸縮に際し連結片に歪みを生ずる欠点がある。

五  同第六項の事実について。

(一) 同項(一)の事実のうち、本件特許発明と被告の製品の作用効果が全く同一であることは争うが、その余は認める。

(二) 同項(二)の(1)の事実のうち、本件特許発明と被告の製品との間に、原告主張のとおりの構造上の相違点があること、及び同項(二)の(2)の事実は、認めるが、その余は争う。

(三) 同項(三)の事実は、争う。被告の製品は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。すなわち、

(1) 被告の製品の共通弾片は、連結片の中央部及び内方折返部を弾力をもつて押圧し、バンドの伸延あるいは彎曲に際し、発条的に反対作用する機能を有しているが、本件特許発明の必須要件である結合彎曲片(被告の製品の連結片がこれにあたる。)を鞘中に確保(脱落防止)する作用を営んでおらず、被告の製品においては、連結片を□状とし、その内部に連鎖片及び共通弾片があるようにした構造、すなわち、連結片の構造を、本件特許発明のU字形結合彎曲片の一方の足とこれと相対する他のU字形結合彎曲片の一方の足とを連結したと同様の構造とすることによつて、前記確保の作用を営んでいるのであるから、結局、被告の製品は、本件特許発明の必須要件を欠き、その技術的範囲に属しないというべきである。

(2) のみならず、被告の製品は、連結片の構造により、本件特許発明に比し、構造簡単で、連結片の幅と連鎖片の間隙部の幅を適宜に選ぶことにより、何ら工具を要せず、容易にバンドの分解、組立て、長さの調節ができる。また、本件特許発明にあつては、バンドの伸縮に際し、U字形結合彎曲片の両脚に均等に板発条の力が働くに対し、被告の製品にあつては、連鎖片中の二本の連結片を互に向きを変えて挿入してあるので、バンドの伸縮に際し、連結片の両脚にあたる中央部と内方折返部に働く共通弾片の力は均等でなく、連結片に歪みを生ずる欠点がある。叙上の点から両者の構造上の差異をもつて、単なる設計上の微差とすることはできない。

なお、被告の製品が本件特許発明の技術的範囲に属しないことは、次の事実からも明らかである。

(イ) 被告の製品は、今田正雄の有する昭和二十九年十二月二十八日出願に係る登録第四六四、六二〇号実用新案「バンド形成基体」の実施品であるが、この実用新案権は、これに対する原告の登録異議の申立を却下したうえで、登録されたものであり、また、右実用新案については、本件特許発明の権利範囲に属しない旨の特許庁の確認審決(昭和三十三年審判第二〇三号事件についての昭和三十四年十二月二十二日付審決)もある。

(ロ) 昭和三十六年六月二十七日、東京高等裁判所は、同裁判所昭和三四年(ネ)第一、二四八号仮処分異議控訴事件について、別紙第一目録記載の物件の製造、販売が本件特許権に牴触せず、権利侵害とならない旨の判決をし、この判決は同年七月十一日確定した。

六  同第七項の事実のうち、被告が原告主張のころから、その主張の製品を販売していることは認める。また、「FIX-FLEX」が「Fixoflex」に類似することは争わないが、その余は否認する。

第三  証拠関係 ≪省略≫

理由

(争いのない事実)

一  原告が、その主張の特許番号第二〇九、七八八号特許権と旧第二十一類時計の鎖、龍頭、その他の附属品及び金属製腕時計用腕輪その他本類に属する商品を指定商品とする登録第四六八、〇六一号「Fixoflex」なる商標権の各権利者であること、右特許権の特許出願の願書に添附した明細書の特許請求の範囲の記載が別紙第二目録の「特許請求の範囲」の項に記載してあるとおりであること、並びに被告が昭和三十二年ごろから原告主張の構造の腕時計バンド(以下「本件物件」という。)を販売していることは、当事者間に争いがない。

(本件特許発明の要部)

二 前記当事者間に争いのない特許請求の範囲の記載に、成立に争いのない甲第四号証(特許公報)の記載を合わせ考えると、本件特許発明の要部は、中空リンク及びこれを互に関節的に、かつ、伸延可能に結合し、発条作用に抗して旋回しうべき結合リンクより成る伸延可能なリンクバンドであり、

(1)  中空リンクが、任意の断面形の円筒状鞘のバンドの縦方向において、互に転位された二組により形成されていること、

(2)  結合リンクが、バンドの縦縁中に設けられたU字形結合彎曲片により形成されていること、

(3)  結合彎曲片は、各二個ずつ、その一方の脚をもつて一方の組の鞘の開放端中に挿入され、その他方の脚をもつて他方の組の転位して位置する隣接した鞘中に挿入されていること、

(4)  各鞘中には、結合彎曲片を鞘中に確保し、かつ、バンドの伸延あるいは彎曲に際し発条的に反対作用する彎曲板発条が設けられていること、

にあるものと認めることができる。

しかして、右の(4)の要件は、各鞘中に設けられている彎曲板発条の特徴を限定し、この彎曲板発条がバンドの伸延あるいは彎曲に際し、発条的に反対作用する機能のほかに、結合彎曲片を鞘中に確保する機能をも果たすものであることを明らかにしたものと解せられるところ、前掲甲第四号証中の「発明の詳細なる説明」の項の冒頭には、本件特許発明の構造に関し「本発明は伸張可能なるリンクバンド特に腕時計バンドに係る而して該バンドは中空リンク及之を互に関節的に且伸張可能に結合し発条作用に抗して旋回し得べき結合リンクより成る本発明の要旨とする所は・・・(中略)・・・各鞘中には結合彎曲片を鞘中に確保しバンドの伸延或は彎曲に際し結合彎曲片の旋回に対し発条的に反対作用する彎曲板発条が設けられたる点に存す」と記載され、さらに、本件特許発明の作用効果として「本発明によるリンクバンドは極めて大なる伸張性及可撓性を有するを特徴とする此の場合バンドの伸延に際し間隙及収縮を起こすことなく従てバンドは常に同一の密集せる外観を維持す更にリンクバンドは異なる三部分のみより即ち鞘、結合彎曲片及板発条より組成せられ之に依り各部分は鑞着或は鋲着を行うことなくして組立てらるるを以てその設計及組立は著しく簡単となり且その製作は著しく経済的となるべし従て各部分は又容易に交換せらるることを得最後に使用板発条が生起する弾性負荷に対して著しく抵抗性なるを以てその弛緩或はその破損の恐れなきことは特に有利なることなり鞘の断面形は任意にして之に依りバンドは種種の嗜好方面に適合せしめらるることを得」と記載され、また、同項第三文には「次に図面により本発明を更に詳細に説明すべし」として、彎曲板発条の構成とこれが果たす機能との関係について「脚15及16の厚さは鞘10、11の内径に比して、板発条12が結合彎曲片14の脚15、16の挿入に依り彎曲片14が第1図より認めらるるが如き大体に於て垂直なる位置に圧迫せられバンドリンクが互に収縮せらるるが如き軽微なる最初張力をこそ得るが如き寸法となされたり然れども第7図より認めらるる如く板発条はその彎曲形を維持し従て脚は間隙を以て鞘中に座着し鞘中にて回転することを得バンドを伸延する場合には結合彎曲片14は旋回せられ此の場合脚15及16は鞘10及11中にて回転し板発条12は押圧せらるその張力は高められ従て該張力はリンクバンドに於ける牽引が中絶する場合結合彎曲片14は再び第1図に依る殆んど垂直の位置に圧迫せられ鞘10及11は収縮す」との記載があり、これらの記載事実を総合すると、本件特許発明は、リンクバンドに極めて大なる伸張性及び可撓性を有せしめることを発明の主たる目的とし、鞘、結合彎曲片及び彎曲板発条の三部材を、彎曲板発条の張力を利用して、弾性的に関節連結することによりこの目的を達成したものであること(なお、成立に争いのない甲第十四号証及び証拠保全における証人<省略>の証言によると、本件発明が右の目的を、従前のものと全く異なつた画期的な、しかも優れた仕方で達成したことを認めるに十分である。)が認められ叙上公報中の各記載並びに本件発明の目的及びこれが目的達成の手段、ことに右目的との関連における彎曲板発条の機能を合わせ考えると、前示の彎曲板発条の機能のうち彎曲板発条が結合彎曲片を鞘中に確保するというのは、結合彎曲片を鞘中に挿入した場合に彎曲板発条が結合彎曲片を鞘の内壁にほぼ垂直方向に、しかも、バンドリンクが収縮するような最初張力をもつて押圧するように彎曲板発条を構成することにより、結合彎曲片が鞘中にガタつかないようにこれを弾力的に固定することを意味するものと解するのが相当である。

被告は、彎曲板発条が結合彎曲片を鞘中に確保するというのは結合彎曲片と彎曲板発条とを掛合することにより、前者が鞘中から脱出しないように固定的に取り付けることである旨主張し、前掲甲第四号証によると、その「発明の詳細なる説明」の項には、前掲冒頭の記載に続いて「特に間隙を以て鞘中に座着する結合彎曲片の脚は高さよりも広き幅を有し且その内側上に横溝を備え該横溝中に縦方向に鞘中に設けられたる板発条がその彎曲端を以て掛合する如く構成せらるることを得」との記載があり、また、実施例の説明中にも、「鞘10及11を互に結合するためにU字形結合彎曲片14が役立ち該彎曲片の脚15及16は厚さよりも大なる幅を有しその内側上に於ては平に構成せられ横溝17或は18を備えたり結合彎曲片14はその上脚部15を以て各二個ずつ相並びて上部組の鞘10の開端中に挿入せられ以て該結合彎曲片14が板発条12の彎曲端13上に接着し此の端が横溝17中に掛合するが如くなされたり」と記載され、さらに、同号証中の附記の項1にも、「間隙を以て鞘10、11中に座着する結合彎曲片14の脚15、16が高さよりも広き幅を有し、且その内側上に横溝17、18を備え該溝中に縦方向に鞘中に設けられたる板発条12がその彎曲端13を以て掛合する特許請求の範囲記載のリンクバンド」と記載され、図面中の結合彎曲片及び彎曲板発条にも横溝及び彎曲端がそれぞれ明示されている。しかし、これらの記載は、いずれも本件特許発明の一実施例を説明したものにすぎないこと、公報の特許請求の範囲中に「各鞘中には結合彎曲片を鞘中に確保し且バンドの伸延或は彎曲に際し発条的に反対作用する彎曲板発条12が設けられ」と記載され、「確保」という字句が用いられておること、一方において「発明の詳細なる説明」の項をみるに、確保と掛合の語は明白に区別して用いられておること、また、明細書中に彎曲板発条と結合彎曲片とを掛合したことによる特段の機能、すなわち、結合彎曲片の鞘中からの脱落の防止という点については何ら触れるところがない点及び前記判断に供した各証拠を総合すると、右の確保の意義を、被告主張のように、結合彎曲片と彎曲板発条とを掛合し、結合彎曲片の鞘からの脱落を防止する趣旨に限定して解するのは相当でなく、この点の被告の主張は理由がないものといわざるをえない。これと見解を異にする乙第三号証(弁理士<省略>の鑑定書)、同第四号証(弁理士<省略>の鑑定書)の各記載及び証人<省略>の証言並びに鑑定人<省略>の鑑定の結果は、叙上説示の理由に照らし、当裁判所の採用し難いところである。

なお、被告は、確保の意義を前説示の趣旨に解するときは、バンドの伸縮による板発条の起伏により結合彎曲片がやがて側方へ押し出されて離脱し、バンドが分解するに至り不合理である旨主張し、証人<省略>の証言及び鑑定人<省略>の鑑定の結果によると、彎曲板発条の張力のみにより結合彎曲片を鞘中に保持する場合には、被告の主張するとおり、バンドを使用しているうちに、結合彎曲片が除々に鞘外に押し出され、やがて離脱するに至るであろうことが認められるが、前示のとおり結合彎曲片が鞘から脱出するのを防止することは、本件特許発明の目的でなく、確保の意義を前説示のように解したからといつて、本件特許発明を実施するにあたり実施者が結合彎曲片が鞘外に脱落するに至ることを防止するための手段を施すことを、本件特許発明は何ら排除するものではないし、前掲証人<省略>の証言によれば、この場合、結合彎曲片が鞘から脱落することを防止するための手段について、何ら触れなくても、これを必要とすることは、平均的な専門技術家にとつては自明のことに属ししかも、その方法は当業者が容易に考えうるものであることが認められ、したがつて、かような結合彎曲片の脱落防止手段は当業者が本件特許発明を実施するにあたり任意に考えればよいことであるから、特許請求の範囲にこの意味の脱落防止手段についての特別の記載を欠いたからといつて、このことは、発明の実施を不完全又は不能ならしめるものでなく、単に発明を実施に移すうえに必要な自明の要素を省略したにすぎないものというべく、発明の構成に欠くことのできない事項を欠くこととはならないし、まして、前記解釈を、この点から不合理だということは、全く筋の通らない論理といわざるをえない。したがつて、被告のこの主張も採用の限りでないことは、いうまでもない。

(本件物件は本件特許発明の技術的範囲に属するかどうか。)

三 本件物件が原告主張のとおり連鎖片、連結片及び共通弾片の三部材からなり、原告主張のとおりの構造上の特徴を有することは、当事者間に争いがない。

しかして、本件物件の構造上の特徴を本件特許発明の要部と対比するに、本件物件の連鎖片、連結片及び共通弾片は、本件特許発明における鞘、結合彎曲片及び彎曲板発条に相当し、両者は、中空リンク及びこれを互に関節的に、かつ、伸延可能に結合し、発条作用に抗して旋回しうべき結合リンクより成る伸延可能なリンクバンドであり、

(1) 中空リンクが任意の断面形の円筒状鞘(本件物件の連鎖片は、これに含まれる。)のバンドの縦方向において、互に転位された二組により形成されていること、

(2) 結合リンクが、バンドの縦縁中に設けられた結合彎曲片により形成されていること、

(3) 右結合彎曲片は、各二個ずつ、その一方の脚をもつて一方の組の鞘の開放端中に挿入され、その他方の脚をもつて他方の組の転位して位置する隣接の鞘中に挿入されていること、すなわち、本件物件の連結片の内方折返部は、本件特許発明のU字形結合彎曲片の一方の脚に相当し、また、本件物件の連結片の中央部は、本件特許発明のU字形結合彎曲片の他方の脚に相当し、これらが本件特許発明の鞘にあたる連鎖片中に挿入されていること、

(4) 各鞘中には、バンドの伸延あるいは彎曲に際し発条的に反対作用をする彎曲板発条が設けられていること

において両者相一致し(このことは、当事者間に争いのないところである。)本件物件における鞘中の共通弾片がその張力により、連結片を鞘の内壁に弾力的に固定し、前記説示の確保の機能を果たしているものであることは、前記当事者間に争いのない本件物件の構成自体に徴し明らかである。また、両者の作用効果をみるに、本件物件が、本件特許発明に比し、一部作用効果が劣るとの後記被告主張の点を除いて、本件特許発明と同様な作用効果を生ずるものであることは、当事者間に争いがなく、右本件物件の欠点として被告の主張するところも、本件特許発明の目的を害するような本質的な相違をもたらすものではなく、単なる程度の問題にすぎないこと後記認定のとおりであるから、本件物件は、本件特許発明の必須要件のすべてを具備し、本件特許発明の技術的範囲に属するものというべきである。前掲乙第三、第四号証の各記載及び証人<省略>の証言並びに鑑定人<省略>の鑑定の結果中の右と異なる見解は、賛同し難く、他に叙上の判断を覆すに足る証拠はない。

被告は、本件物件の共通弾片は連結片の鞘からの脱落を防止する機能を備えていない点で本件特許発明と異なる旨主張するが、「確保」の意義は前記説示のとおりであるから、これと異なる見解を前提とする右主張は採用の限りでない。また被告は本件物件における連結片は本件特許発明の結合彎曲片がU字状であるのに対し、□状であり、この構造の連結片二本を連鎖片中に互き向きを変えて挿入してあるので、本件特許発明と異なり、バンドの伸縮に際し、連結片の両脚にあたる中央部と内方折返部に働く共通弾片の力が均等でなく、連結片に歪みを生ずる欠点があるし、他方、右の連結片の構造上の相違により、本件特許発明に比し、構造簡単で、連結片の幅と連鎖片の間隙部の幅を適宜に選ぶことにより、何らの工具を要せず、容易にバンドの分解、組立て、長さの調節ができる旨主張し、成立に争いのない乙第三号証の記載及び前掲証人<省略>の証言によると本件物件の連結片の一方の脚にあたる中央部はつながつているため、本件特許発明の場合と異なり、側面彎曲に際し、一方の側が転位すれば他方の側もその影響を受けて連結片に歪みを生じ、側面彎曲の程度が本件特許発明に比し若干劣ることが認められるけれども、この欠点はまだ本件特許発明との同一性を害するような本質的な相違をもたらすものとは認め難いから、このことを理由に、本件物件が本件特許発明の権利範囲に属しないものとすることはできない。また、被告主張の本件物件についての特段の作用効果は、本件特許発明においてもこれを有することは、前示のとおりであるが、仮に本件物件のこの点の作用効果が本件特許発明のそれをこえるものがあるとしても、右は被告の主張自体から明らかなように、本件特許発明の構成要件以外の構造に由来するものであるから、この点を理由に、本件物件が本件特許発明の技術的範囲に属しないものとすることはできない。なお、本件物件のうち(ロ)号図面のものが本件特許発明にない覆鞘を有することは当事者間に争いのないところであるが、右覆鞘は装飾的効果を目的としたものであることが、その構造自体から明らかであり、本件特許発明とは何ら関係のない付加構造にすぎないものというべきである。

さらに、被告は本件物件が本件特許発明の技術的範囲に属しないことを示す事情として、本件物件は登録第四六四、六二〇号実用新案の実施品であるが、右実用新案に対する原告の登録異議の申立が却下されたこと、右実用新案について本件特許発明の権利範囲に属しない旨の特許庁の確認審決があつたこと、及び東京高等裁判所における昭和三四年(ネ)第一、二四八号仮処分異議控訴事件につき、本件物件が本件特許権に牴触せず、権利侵害とならない旨の確定判決があつたことを挙示するが、仮に本件物件が右登録第四六四、六二〇号実用新案の実施品であるとしても、成立に争いのない乙第二号証の一(登録異議の決定謄本)によると前記異議申立却下の理由は、「右実用新案には、本件特許発明にない構造を有し、その結果本件特許発明と異なる作用効果があるから新規な考案が存するものと認められる」というにあり、本件特許発明と右実用新案との権利使用の関係について何ら言及するところがないのであるから、右異議申立の却下の事実は、前示判断を妨げる資料とならないし、被告主張の確認審決も成立に争いのない乙第五号証(同審決謄本)によると、右実用新案がバンドの形成基体を考案の対象とし、板バネの存在を必須要件としないものと、その考案要旨を認定したうえ、本件特許発明の必須構成要件である板バネを欠くことを理由に右実用新案が本件特許発明の権利範囲に属しないものと認定したものであるから、右確認審決も前示判断を左右する的確な資料ということはできない。また、被告主張の仮処分事件についての確定判決(乙第一号証)が存することは当事者間に争いがないが、この判決の存在が何ら前示判断に支障を与えるものでないことは、多く論ずるまでもない。したがつて、被告主張の叙上の事実は、すべて、前示認定を左右するに足りないものというほかない。

なお、附言するに、仮に「確保」の意義を、被告主張のように、結合彎曲片の鞘からの脱落防止の機能を含むものと解したとしても、本件物件は、本件特許発明が彎曲板発条に右脱落防止の機能をもたしたに対し、これと同一の機能を連結片の構造を□状に構成することにより達したものであり、単に脱落防止手段を設けた位置を移しかえたにすぎず、しかもこの防止手段をどこに設けるかは本件特許発明の本質に関係しないものであること、前示のとおり、かような脱落防止手段は当業者が容易に考えうるものであること、及び本件特許発明は鞘、結合彎曲片、彎曲板発条の三部材から成り立つのであるから、右脱落防止手段も必然的にこの三部材のいずれかに設けざるをえないことが自明であること等からみて、叙上両者の差異は単なる設計上の微差というべきであり、右の差異を理由にして、本件物件が本件特許発明の技術的範囲に属することを否定し去ることはできないものといわざるをえない(右と見解を異にする前掲乙第三、第四号証の各記載及び証人<省略>の証言並びに鑑定人<省略>の鑑定の結果は、いずれも採用しない。)。

(特許権侵害行為に対する差止請求)

四 被告が、本件物件を昭和三十二年ごろから、業として販売していることは、前記認定のとおりであり、また、この事実から、被告が本件物件を貸し渡し、又は販売若しくは貸渡しのために展示していること、及び被告が肩書本店所在地において本件物件を現に占有所有していることは、容易に推認できるところ、本件物件が本件特許発明の技術的範囲に属すること、叙上説示のとおりであるから、被告の前記販売等の各行為は本件特許権を侵害するものといわざるをえない。したがつて、本件特許権に基づき、被告に対し業として本件物件を譲渡し、貸し渡し、又は譲渡若しくは貸渡しのために展示する行為の差止め及び侵害行為の組成物件である被告が肩書本店所在地で所有するところの本件物件の廃棄を求める原告の請求は、すべて理由があるものというべきである。

(商標権の侵害行為に対する差止請求)

五 <証拠―省略>並びに弁論の全趣旨を総合すると、被告が昭和三十四年十二月ごろ、本件物件に「FIX-FLEX」なる商標を附して販売していたことを認めることができ(この認定を覆すに足る証拠はない。)右商標が原告の本件登録商標と類似することは被告の認めて争わないところであるが、前掲甲第九号証によると、被告会社役員は、本訴提起の後である昭和三十七年五月二十五日、台東簡易裁判所において、前記の商標使用行為につき、商標法違反として、略式命令を受けたことが認められるところ、このようなことがあつたにかかわらず、その後においても、なお被告が前記商標の使用を継続していること、又は将来使用するおそれがあることについては、これを認めるに足る証拠は全くない。したがつて、本件商標権に基づき、被告に対し前記商標の使用の差止めを求める請求は理由がないといわざるをえない。

(むすび)

六 叙上説示のとおりであるから、原告の請求は主文第一、第二項の限度で理由があるものとしてこれを認容し、その余の請求は失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九十二条、第八十九条を、仮執行の宣言について同法第百九十八条第一項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官三宅正雄 裁判官武居二郎)(裁判官白川芳澄は、転補のため、署名押印することができない。)

第 一 目 録

別紙(イ)号、(ロ)号各図面及び図面説明書記載のとおりの腕時計バンド

図面説明書

一、図面の簡単な説明((イ)号図面及び(ロ)号図面とも同じ。)

第一図は、腕時計バンドの一部を収縮した状態において切欠して示す斜視図、第二図から第五図は、前記バンドの各構成部分をそれぞれ斜視図にて示すもの、第三図は下部連鎖片、第四図は共通弾片、第五図は連結片である。

二、構成

(1) 左右の両側片1を垂直状に起立させ、その先端を内方折返部2とした断面□状をなす連結片14を二本並列していること。

(2) この並初された連結片の中央部3の両脇に、共通弾片12の両端を当設し、これが共通弾片の背面を下部連鎖片11の両側辺4間に間隙6を残存させて内折した係止部5に係止するように共通弾片12及び連結片14の左右両側片1間に下部連鎖片11を嵌着して下部連結体Aを構成していること。

(3) この二個の下部連結体Aの一方の連結片14の内方折返部2の基端に、共通弾片の両端を当設し、上部連鎖片10の両側辺4間に間隙6を残存させ、下部連鎖片11と同様にして上部連結体A′を構成し、もつて前記上部連結体A′と下部連結体Aとを順次交互に連結していること。

(以上は、二つの図面に共通な部分である。以下は、二つの図面のうち後の図面に特有なもの)

(4) 上部連鎖片10の両側片4、4の中央に切欠部7を設け、これに覆鞘8の中央突片9、9を折り曲げて嵌着せしめていること。

特許庁特許公報(特許出願公告昭三九―三一九六)

(公告 昭二九・六・三 出願 昭二七・三・二八特願 昭二七―四五六七 優先権主張 一九五一・四・一〇、一九五一・四・二三(ドイツ国))

伸延可能なるリンクバンド

図面の路解

図面は本発明の実施形を示すものにして第一図は収縮せるバンドの側面図にして一部分断面にて示されたり。第二図は伸張せるバンドの側面図にして一部分断面にて示されたり。第三図は収縮せるバンドの一部の平面図を小なる寸法にて示すものにして一部分断面にて示されたり。第四図は伸張せるバンドの一部を平面図にて第三図と同一寸法にて示すものなり。第五図は板発条の斜視図にして、第六図は結合彎曲片の斜視図なり。第七図は第一図の線Ⅶ―Ⅶに依るリンクバンドの横断面を示し此の場合鞘の左端に於ては結合彎曲片は除かれたり。第八図は第二図の線Ⅷ―Ⅷに依るリンクバンドの横断面を示す但し第五図乃至第八図は比較的大なる寸法にて示されたり。第九図は本発明に依るリンクバンドと結合せる収縮せる接続リンクの側面図にして、第一〇図は懸吊添骨上に被せられ且収縮せる接続リンクの平面図にして一部断面にて示されたり。第一一図は一部分挿入せられたる滑り蓋を有する懸吊添骨上に於ける接続リンクの平面図、第一二図第一三図及第一四図は懸吊添骨を通る断面を有する側面図にて接続リンク中に懸吊添骨を挿入する三段階を示す。第一五図は使用位置に於ける懸吊せられたる懸吊添骨を有する接続リンクの側面図、第一六図及第一七図は本発明に依る接続リンクの他の二実施形を側面図にて示す。第一八図は接続せるバンド端を有する腕時計の平面図を小なる寸法にて示す。

発明の詳細なる説明<省略>

特許請求の範囲

本文所載の目的に於て本文に詳記し図面に明示せる如く中空リンクが任意の断面形の円筒状鞘一〇、一一のバンド縦方向に於て互に転位せられたる二組に依り形成せられ結合リンクがバンド縦縁中に設けられたるU字形結合彎曲片一四に依り形成せられ該結彎曲片は各二個づつその一方の脚一五を以て一方の組の鞘一〇の開放端中に挿入せられその他方の脚一六を以て他方の組の転位して位置する隣接せる鞘一一中に挿入せられ且各鞘中には結合彎曲片を鞘中に確保し且バンドの伸延或は彎曲に際し発条的に反対作用する彎曲板発条一二が設けられたることを特徴とする中空リンク及之を互に関節的に且伸延可能に結合し発条作用に抗して得べき結合リンクより成れる伸延可能なるリンクバンド殊に腕時計用バンド

附   記

一 間隙を以て鞘一〇、一一中に座着する結合彎曲片一四の脚一五、一六が高さよりも広き幅を有し且その内側上に横溝一七、一八を備へ該溝中に縦方向に鞘中に設けられたる板発条一二が、その彎曲端一三を以て掛合する特許請求の範囲記載のリンクバンド

二 二個の互に結合せられたる鞘二〇、二四を有し該鞘の一方は腕バンドに接合せらるべき結合鞘二〇として構成せられ該鞘の他方は懸吊鞘二一として滑り蓋二四に依り閉鎖せらるべき物体二七の懸吊彎曲片二五上にて滑動すべき懸吊溝二二を滑り蓋がバンドの使用位置に懸吊せる後懸吊彎曲片の腕二六間に在るが如き状態に於て有することを特徴とする懸吊彎曲片を担持する物体例えば腕時計匣と結合すべき特許請求の範囲及附記一記載のリンクバンド用接続リンク

三 リンクバンドに接合せらるべき結合鞘二〇がバンドリンク一〇の組の殊に適当なるは半分の幅を以て構成せられたる最後のリンクを形成し且側方結合彎曲片一四の最後の対に依り他の組の最後リンク鞘一一と結合せられ一方懸吊鞘二一が腕バンドの全厚に相当する高さを有する附記二記載の接続リンク

四 一片にて薄鈑より彎曲せられたる附記二或は三記載の接続リンク

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